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到達運動のバイオメカニクス:後天性脳損傷を持つ個人に対する臨床的意義

今回はMcCreaら(2002)の論文をご紹介します。

はじめに

到達運動は、身だしなみ、トイレ、食事、移動、着替えなど、ほぼすべての日常生活動作に不可欠です

到達運動とは、環境と相互作用するために手を目的の位置に自発的に配置することと定義されます

これには複数の関節の協調と、筋骨格系および神経系の両方の関与が必要です

脳卒中や外傷性脳損傷(TBI)の患者の約85%が上肢の急性障害を経験し、40%が慢性的な障害を抱えています

また、脳卒中患者の半数以上で、集中的なリハビリテーションを行っても上肢は重度の障害が残存します

評価方法と課題

後天性脳損傷(ABI)後の到達能力は、一般的にFrenchay Arm Testなどの標準化された上肢機能スケールの一要素として順序尺度で評価されています

これらの総合的なスケールは機能的パフォーマンスの大きな変化を測定するのに有用ですが、小さくても重要な変化に対する感度が不足しています

さらに、運動機能障害の根本的な原因に関する情報をほとんど提供しません

バイオメカニクス的アプローチ

人間の動作を完全に理解するには、運動学的(動き)および運動力学的(力)分析を統合して、体に作用する内部の力(筋肉、靭帯からの力など)と外部の力(ドアや食器などの物体との接触による力)を特定する必要があります

電気生理学的、運動学的、運動力学的な測定は、神経学的および整形外科的状態とその治療の効果に敏感です


到達運動の特徴と評価

正常な多関節到達運動は、開始点と終点の間でほぼ中間に最大速度が現れる滑らかなベル型の速度プロファイルによって特徴づけられます

手の軌道は直線的またはわずかに曲がった形状を示し、このような軌道を生成するには、肩と肘の関節回転を協調させる必要があります

健常者では、肘と肩の角速度の比率がほぼ一定に保たれています

臨床的意義

バイオメカニクス的研究から、従来のリハビリテーションでは評価されていない手の軌道や動作速度などの変数の重要性が示されています

実際、セラピストは視覚的アナログスケールを使用して、コンピュータ化されたビデオシステムと比較して、動作速度、ぎこちなさ、手の軌道の間接性について正確な判断を下すことができることが示されています

今後の展望

バイオメカニクス的研究は、上肢機能の特定の欠陥を特定し、将来の臨床研究の方向性を示すことができます

例えば、到達運動のパフォーマンスは拮抗筋の痙縮ではなく、作動筋の弱さや、望ましい手の軌道を協調された肘と肩の関節運動に変換する能力の欠如に関連していることが示唆されています

参考文献

McCrea et al. Biomechanics of reaching:Clinical implications for individuals with acquired brain injury. 2002

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