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歩行速度に関連する縦アーチサポート力学:足底腱膜の貢献

今回はPaoloら(2010)による論文をご紹介します。

・踵骨の下縁から起始し、5本の足趾の基節骨底に停止する準弾性線維性結合組織

・足の内側縦アーチ(MLA)を支える最も重要な受動的構造物にの1つ

・他の靭帯や腱と協調して働き、足の柔軟性を変化させる

・受動的な伸長により弾性エネルギーを蓄える

生体外研究により足底腱膜構造の破壊は、縦アーチの平坦化、中足骨頭下の圧力増加、地面への力の伝達方法の変化、足底腱膜切除術を受けた患者でのエネルギー効率の低下をもたらすことが示されている

目的

・歩行速度の変化に伴う足の力学的適応を理解する

・足底腱膜の張力とアキレス腱の張力の関係

方法

対象:10名の健常者(29.3±6.4歳)

方法:

6台のカメラによるモーションキャプチャーシステムを使用

足に12個の反射マーカーを装着

3種類の歩行速度(遅い・通常・速い)で測定

床反力計で床反力を記録

図は12個のマーカー位置と内側縦アーチの変形を測定するために使用される3つのマーカー位置

結果

1.速い歩行時の特徴

・立脚期の時間が短縮

・床反力のピークが最大

・つま先の背屈が増加

・足底腱膜の初期緊張が増加

上図:垂直方向の床反力 下図:前後方向の床反力

横軸は立脚時間を100%で正規化 縦軸は体重で正規化された力の大きさ

2.アーチの変化について

・速い歩行では、初期接地時により大きな変化

・立脚中期以降は速い歩行でアーチがより上昇

・歩行速度が上がるとアーチの可動範囲が減少

図は内側縦アーチ(MLA)の変形を歩行速度で比較したグラフ

横軸は立脚期 縦軸はMLAの角度変形

3.足底腱膜の緊張

・初期から中期の緊張は速度とともに増加

・後期の最大緊張は速度の影響をあまり受けない

・内側の腱膜が外側より大きな影響を受ける

図は足底腱膜(PA)の張力を歩行速度別に比較

横軸は立脚期 縦軸は足底腱膜の張力

結論

・速い歩行に適応するため、足のアーチは硬さを調整する機能がある

・前脛骨筋などの筋肉が足底腱膜の緊張を調整し、踵接地前のアーチの柔軟性を変化させる

・立脚後期のアーチ上昇には、内在筋が重要な役割を果たしている

図は踵接地時における足の縦アーチに作用する主な内部力と外部力

1.外部力

GFR:床反力 BW:体重

2.内部力

PA:足底腱膜の張力 AT:アキレス腱の張力

筋力 ・EDL:長趾伸筋 ・EHL:長母趾伸筋 ・TA:前脛骨筋

臨床的には、足部内在筋の強化の重要性や、歩行速度に応じた段階的な負荷設定の必要性、靴やインソールを考える際も歩行速度による足部アーチの変化を考慮することが挙げられるかと思います。

参考文献

Paolo et al. Dynamics of longitudinal arch support in relation to walking speed: contribution of the plantar aponeurosis. 2010

NEUROスタジオ東京 山岸梓