今回はSoo-Kyung Bokらの研究をご紹介します。
高齢化が進む現代社会において、高齢者のQOLへの関心は高まっています。
地域在住高齢者の約3分の1が毎年転倒していることが明らかになっており、転倒率は年齢とともに上昇します。転倒関連の怪我(骨折など)は日常生活機能に悪影響を与え、自立歩行や身体活動、社会参加を制限する要因となります。
転倒の危険因子として筋力低下やバランス能力の低下、歩行障害、服薬数など複数のリスク要因が関連しています。
加齢とともに姿勢制御能力は低下し、Colledgeらの研究によると、姿勢の揺れは性別に関係なく、加齢とともに直線的に増加することが示されています。
目的
加齢による足首の筋力と可動域(ROM)の変化を調査し、バランス能力にどのように影響するかを明らかにすること
方法
・被検者
健常者60名(男性24名、女性36名)
3グループに分類(各グループは20名)
グループ1:20−40歳
グループ2:40−65歳
グループ3:65歳以上
・測定項目
足首の筋力とROM
片足立ちバランス試験(開眼で20秒) (前後/左右の重心動揺を計測)
Desmondの転倒リスク質問票
結果
1.加齢による足首の筋力変化
すべての方向(背屈・底屈・内反・外反)で筋力は加齢とともに低下
特に底屈筋力のみが統計的に有意な低下を示した
図はグループ毎の筋力(方向) 上から背屈・底屈・外反・内反
2.加齢による足首のROM変化
すべての方向で加齢とともにROMは低下
外反ROMが統計的に有意に低下
図はグループ毎のROM 上から背屈・底屈・外反・内反
3.バランスと転倒リスクの年齢関連変化
前後方向・左右方向の姿勢動揺が加齢とともに増加
左図は片脚立位時の圧力中心(COP) 右図はグループごとの総合安定性指標
4.華麗に関連した足首の変数とバランスの相関
・グループ1と2
足首の筋力、ROM、バランスの間に強い相関は見られなかった
・グループ3(65歳以上)でみられた有意な相関
① 足首底屈筋力と
前後方向の姿勢動揺・総合安定性指標・転倒リスクスコア
② 足首外反ROMと
左右方向の姿勢動揺・総合安定性指標・転倒リスクスコア
③ 前後および左右方向の動揺
転倒リスクスコア
これらの結果は、特に高齢者において、足首の機能(特に底屈筋力と外反ROM)がバランス能力と密接に関連していることを示す
臨床的には…
高齢者の転倒リスク評価において、足首の機能評価が重要であること(特に足首の底屈筋力と外反可動域)
早期介入や予防的介入の重要性
参考文献
Soo-Kyung Bok et al. Ann Rehabil Med 2013
The Effects of Changes of Ankle Strength and Range of Motion According to Aging on Balance
NEUROスタジオ東京 山岸