前回までは、ヒトの二足直立歩行にとって重要であった系統発生学的な話を中心に、足部についてまとめてみました
今回は、歩行にとっての大事なアーチ、推進力生成に関わるウィンドラス機構について、お話したいと思います
足部のアーチには
✔︎内側縦アーチ
✔︎外側縦アーチ
✔︎横アーチ
の3つが存在します
この3つのアーチが存在するからこそ、
・床面に対して柔軟に適応・変化することができ立脚期が安定する
・バネのように機能することで、推進力の生成に関わる
ことができるということです
つまり、
足部の役割としては、
●姿勢の安定性
●推進力の生成
という二つの側面が重要であると考えます
ですがこの足部のアーチは『骨のアライメント』『靭帯組織』だけでは十分な柔軟性や剛性を高めることはできません
それには足部の内在筋の働きが重要な役割を果たしているとされています
ここからは、Luke A Kelly2014の論文を参考にストーリーを進めていこうと思います
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25551151/
Lukeらは歩行時に重要な足部内在筋の活動を計測し、どのタイミングで活動を起こしているかを計測しています
計測筋は、
①母趾外転筋
②短趾屈筋
③足底方形筋
姿勢制御的に関わる ①母趾外転筋
①母趾外転筋は、踵接地前に一度活動が起こり、立脚初期にかけてピークを迎えます
母趾外転筋の役割は、踵接地前に活動が開始する点が大事だと考えられます。立脚開始前に活動することで内側縦アーチに緊張を与え、安定した立脚期を迎えるための姿勢制御の準備に関与していると考察されます。また、立脚初期にかけてピークを迎えるところを見ると、母趾が外転することで、足部の内外側に広さを与えます。つまり第1中足骨から第5中足骨間が広くなるための条件の一つではないかと考えられ、立脚中期から後期にかけて、前足部の安定に関与するのではないかと考えます。
姿勢制御と推進力生成に関与する、②短趾屈筋と③足底方形筋
②短趾屈筋は、立脚中期から後期にかけて活動のピークが起こります。最も重要な視点は短趾屈筋の筋腱複合体(Muscle Tendon Unit)が立脚初期~後期にかけて長くなり、Toe Off直前に距離が短くなる点です
③足底方形筋は、立脚初期に小さな活動が出現し、立脚後期~Toe offにかけて活動のピークが生じます
短趾屈筋は踵骨隆起下面と足底腱膜近位部に付着するので、足底腱膜の緊張に関与することが想像できます。筋活動が立脚中期から後期にかけて活動がピークを迎える点を考えると、体重支持によって足底腱膜に緊張が加わり、内側縦アーチが下降するのを、遠心性の活動によって制動をかけています。つまり、足底腱膜のアーチ・スプリング(Lauren Welte 2018)の伸張を調整しています。そして、踵が床から離れた途端に伸張していた足底腱膜のアーチ・スプリングがリコイル様に短縮し、ウィンドラス機構が活動的になるというわけです
足底方形筋はこの踵が床から離れた後に筋活動がピークを迎えます。これらの働きは内側縦アーチが、足底腱膜のリコイルによって剛性が低下するのを足底方形筋の活動によって剛性を維持するのに関わりがると考えられます。①アーチが高くなり、②足底腱膜が短くなる、③剛性が低くなる、④足底方形筋が縦アーチの剛性を維持するという時系列が説明できます
以上長くなりましたが、
簡単に時系列にまとめると
1、踵接地の前に母趾外転筋が足部の安定に活動を開始する
2、支持期に移行する
3、立脚中期から後期にかけて短趾屈筋が遠心的に活動し、筋腱複合体の長さを制動する
4、足底腱膜のアーチ・スプリングの伸張
5、踵が離れる
6、足底腱膜のアーチスプリング短縮(リコイル)
7、縦アーチの剛性を足底方形筋が維持
8、前方への推進力生成
です!!
臨床的にどうみていくか?
✔︎踵接地の前のFeed forward制御として、母趾はが移転しているのか?
✔︎MP関節の伸展は得られるのか?短趾屈筋は柔軟に長さの変化を出せるのか?
✔︎爪先立ちをした際に、内側縦アーチの剛性は維持できているのか?
という点を評価としてみてみると、歩行の何を見ればいいのかが、少し分かるかもしれません!
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