今回は2015年にBritish Journal of sports Medicineに掲載されたPatrickらの論文をご紹介します。
Patrickらは「foot core system」という新しい概念を提示し、従来の足部治療アプローチの限界と新しい理解の枠組みの必要性を示唆しています。
コア安定性の基本概念
腰椎骨盤股関節複合体(コア)の筋肉システムは、局所安定化筋と全体的な動作筋で構成されている。局所安定化筋は小さな断面積と短いモーメントアームを持ち、分節間の安定性を高めている。
局所安定化筋の特徴として、大きな回転モーメントは生成せず、分節間の安定性を向上させる。主動作筋が効果的に機能するための安定した基盤を提供している。
コア筋が弱いまたは適切に動員されていない場合、近位基盤が不安定になり、体幹と下肢の異常な動きパターンを引き起こす。
コア安定性の概念は足のアーチにも適用可能で、アーチは局所安定化筋と全体的な動作筋によってコントロールされている。局所安定化筋は足の4層の底部内在筋、全体的な動作筋は下腿から起始し、足に停止する筋肉である。
足の内在筋は、歩行時の各相でアーチの変形の程度と速度をコントロールしており、機能不全になると不安定で不適切なアライメントを引き起こす。
人間のアーチの起源
進化的背景としてヒトの足はアフリカの猿人類の足から進化しており、樹上性と地上性の両方の移動に使用される足から、二足歩行専用の足へと変化した
猿人類から人類への主な構造的変化は、
・拡大し永久に内転した母趾
・短くなった側方の指
・足根骨の圧縮と再配列
・明確な内側縦アーチの発達
現代人の体の構造は持久力の力学的要求を反映しており、「脚のバネ」が重要となっている。特にアキレス腱・足底腱膜・スプリング靭帯が発達した。
走行時の足の特徴として
・立脚後期とつま先離地期の指の大きな伸展力
・立脚中期でのアーチの平坦化による衝撃吸収と弾性エネルギーの貯蔵
・他の四足走行動物と異なり、内在筋が維持されている
内在筋は歩行時は立脚後期に活動し、走行時に最も一貫した活動を示す。また負荷が増加すると活動が増加する。
The Foot Core System
1.理論的基礎
Panjabi(1992)の脊椎運動と安定性に関する3つのサブシステムの概念を応用し、受動的、能動的、神経の各サブシステムの相互作用で成り立つ
●受動的サブシステム
骨・靭帯・関節包で構成され、足の4つのアーチ(内側・外側縦アーチ、前部・後部横アーチ)を維持
これらのアーチは機能的な半ドーム構造を形成し、足底腱膜と足底靭帯が主要な支持構造となっている
●能動的サブシステム
局所安定筋:足の内在筋(足に起始・停止をもつ)
全体的な動作筋:外在筋(下腿に起始、足に停止をもつ)
図は足の内在筋の解剖学的配置を4つの足底層と背側内在筋に分けて示している
①母趾外転筋 ②短趾屈筋 ③小趾外転筋
④方形足底筋 ⑤虫様筋
⑥小趾屈筋 ⑦母趾内転筋(a:斜頭、b:横頭) ⑧短母趾屈筋
⑨足底骨間筋
⑩背側骨間筋 ⑪短趾屈筋
これらの筋は、足のアーチの支持や足趾の動きを制御する重要な役割を果たす
最初の2層は主に縦アーチ(内側・外側)に沿って配置
深層の筋肉は主に横アーチ(前部・後部)に関連
●神経サブシステム
足底腱膜・靭帯・関節包・筋肉・腱の関節受容器で構成される
足底感覚は歩行とバランスに重要で、内在筋は足のドームの変化に関する即時的な感覚情報を提供する
従来の装具などの外部サポート中心の治療から、内在筋の強化も視野にいれる機会になったのではないでしょうか。
後半ではフットコア評価・トレーニングの方法も提示されています。興味を持った方は、ぜひ論文を読んでみてください。
参考文献
Patrick et al. The foot core system: a new paradigm for understanding intrinsic foot muscle function. 2016.
NEUROスタジオ東京 山岸梓