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脳卒中後の歩行機能回復に関する縦断的光イメージング研究

今回ご紹介する論文は、Miyaiらの2003年に発表された研究になります。

背景

PETやfMRIなどの機能的脳イメージング技術の進歩により、脳卒中後の麻痺手の機能回復には・損傷側の一次感覚運動野(SMC)の梗塞周囲・損傷側の運動前野(PMC)や補足運動野(SMA)・非損傷側の上記の領域の組み合わせの皮質再組織化が関与していることがわかってきた。

麻痺手のに関する知見は蓄積されてきたが、歩行回復のメカニズムについては脳卒中患者の片麻痺歩行では、一次感覚運動野(SMC)の非対称な活動と運動前野(PMC)および補足運動野(pre-SMA)の動員が観察されることが示されたものの、ほとんど解明されていない。

脳卒中後の歩行回復の過程で皮質活動がどのように変化するかを近赤外分光法(NIRS)を使用し、縦断研究のなかで明らかにすること

対象:初発脳卒中患者8名(2〜3ヶ月のリハビリを受けるも、独立歩行とADLが達成されていない者)

条件:

・トレッドミル上での歩行(速度0.2km/h)

・30秒の歩行タスクと30秒の休憩を4回繰り返す

・必要に応じて:

セラピストが麻痺側で介助・重症例は体重の20%を免荷・各患者でリハビリ前後の測定条件は同一

・NIRSにて測定(酸素化ヘモグロビン値を皮質活動のマーカーとして使用)

測定部位は前頭頭頂領域:内側一次感覚運動野(SMC)、補足運動野(SMA)、運動前野(PMC)、補足運動前野(pre-SMA)、前頭前野の一部

●初回評価時

・SMAの活動は非損傷側で多く、損傷側で少ない

・SMAとPCMでの活動が観察された

・大きな皮質病変と重度の片麻痺がある患者では、pre-SMAと前頭前野の活動が見られる傾向

・損傷部位では活動なし

●2回目の評価時

・SMAの非対称性が改善

・特に損傷側でPMCの活動が増強

・大きな皮質損傷のある患者では、pre-SMAや前頭前野の顕著な活動が観察

・時間と部位の間に有意な相互作用

・損傷側PMCの活動のみが時間効果で有意な増加

・SMCの左右非対称性が有意に改善

・リハビリ後にFugl-Meyer scaleのスコア、歩調、遊脚期の左右非対称性が有意に改善した

・遊脚期の左右非対称性の変化とSMCの左右非対称性の変化に有意な相関

これらの結果は、脳卒中後の歩行機能回復が、特にSMCの活動の対称性回復と損傷側PMCの活動増強と関連していることを示している

図は4人の異なる脳卒中患者(A,B,C,D)の歩行時の皮質マッピング

各患者についてリハビリ前(pre)とリハビリ後(post)の活動パターン、およびMRI画像での病変部位を示している

病変の部位や大きさが異なるにもかかわらず、リハビリ後に共通してみられる特徴として①SMA活動の対称性の改善、②PMCの活動増強、③歩行機能の改善を示している

SMC活動の左右対称性の回復が歩行機能の改善と相関すること、損傷側PMCの活動増強が機能回復に重要な役割を果たすことなど、脳の可塑性と回復メカニズムを理解することで臨床での思考や介入にも視点が広がるのではないでしょうか。

参考文献

Miyai et al. Longitudinal Optical Imaging Study for Locomotor Recovery After Stroke. 2003

NEUROスタジオ東京 山岸梓