今回ご紹介する論文は「Cortical Mapping Of Gait in Humans: A Near-Infrared Spectroscopic Topography Study」(2001)です。
近赤外分光法(NIRS)イメージング技術を用いて、ヒトの歩行が大脳皮質でどのように制御されているかを可視化する研究となっています。
方法
被験者 8名(男性4名、女性4名) 平均年齢35±8歳
実験設定
- トレッドミル上で4つのタスクを実施
- NIRSトポグラフィーシステムにて測定
- タスクの内容:
- トレッドミル歩行(速度1.0 km/h、約100歩/分)
- 立位での腕振り運動(歩行なし)
- 座位での足の背屈と底屈の交互運動(1Hz)
- 立位での歩行イメージ
データ収集項目
・酸素化ヘモグロビン(oxyHb)
・脱酸素化ヘモグロビン(deoxyHb)
・総ヘモグロビン(totalHb)
検証方法
2名の被検者でfMRIも実施し、NIRSの結果と比較
これらの方法で、歩行中の脳活動を非侵襲的に測定した
結果
●トレッドミル歩行時の脳活動パターン
両側性の活性化が観察され、主な活性化領域は、内側一次感覚運動野と補足運動野であった
●各タスクでの活性化パターンの比較
▲ 腕振り運動
- 一次感覚運動野の外側部が活性化
- 内側感覚運動野と補足運動野の活性化なし
▲ 足の屈伸運動
- 内側一次感覚運動野と補足運動野が活性化
- 歩行時より活性化範囲が狭い
▲ 歩行イメージ
- 両側の補足運動野の後方部で活性化
- deoxyHb(脱酸素化ヘモグロビン)の明確な変化なし
●グループデータの分析
- 歩行関連活動は内側感覚運動領域に集中
- 左後方チャンネル(左一次感覚野に相当)で優位な活性化
- 個人差による非対称性も観察された
● fMRIとの比較検証
- NIRSとfMRIで類似した活性化パターンを確認
- fMRIの方が活性化領域が小さく表示される
図は左より歩行時・腕振り時・足の運動時・歩行イメージ時のNIRS測定の結果
図はfMRI測定の結果
臨床的には設備がなければ測定できないというデメリットもありますが、非侵襲的に動作時の脳活動が確認できることは大きなメリットであり、この知見を臨床での推論に活かせるのではないかと思います。
Miyai et al. Cortical Mapping Of Gait in Humans: A Near-Infrared Spectroscopic Topography Study. 2001
https://doi.org/10.1006/nimg.2001.0905
NEUROスタジオ東京 山岸