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脳卒中後の運動機能回復を支えるメカニズム

脳卒中は世界的に長期障害の主な原因となっています。

リハビリテーションにおいては機能障害への適応を支援する治療や、機能回復を目的とした治療がありますが、普遍的に受け入れられた治療法が存在しません。

今回ご紹介する研究では、局所損傷後の脳の再組織化と機能回復と臨床へ転換する方法について述べられています。

●可塑性の基本概念

Hebbが提唱した理論が基礎となっている

シナプスの効率性の向上は学習時に起こり、あるニューロンの発火が接続している別のニューロンの発火を繰り返し引き起こすことで生じる

行動の適応(学習)がシナプスレベルでの変化と関連

●皮質レベルでの可塑性の変化メカニズム

豊かな環境での生活や技能学習により樹状突起の成長・増加やシナプス形成の促進が観察されている

海馬や新皮質では、長期増強や長期抑制

運動技能の学習時は、一次運動野内の結合強度の変化

これらのメカニズムはヒトの運動学習でも機能していると考えられている

運動機能の回復は皮質脊髄路の損傷程度と強く相関

一次運動野(M1)から脊髄運動ニューロンへの投射が障害されると、代償的に二次運動野(背外側運動前野・補足運動野・帯状回運動野)の活動が増加

二次運動野からも脊髄運動ニューロンへの直接投射を持つが、M1に比べ数が少なく、興奮性が弱いため完全な代替はできない

慢性期の脳卒中患者の研究では、機能障害が大きいほど二次運動野の活動が広範囲になることが示されている

回復過程の初期段階では多くの運動関連領域で皮質の過剰な活性化がみられるが、時間(回復)経過とともに健常者に近い活性化パターンへと収束する

γ−アミノ酪酸(GABA)が皮質マップの維持に関与

図はBOLD信号の増加と機能回復度の間に負の線形相関がある脳領域

機能回復が悪い症例ほど、これらの領域での活動が強い(二次運動野・補足運動野・帯状回運動野・一次運動野の一部)

脳構造の変化と行動の変化には明確な関連がある

成体の脳に局所的な損傷が起きると

→広範な皮質領域が発達期の脳のように変化しやすくなる

→入力信号に対する構造的・機能的な変化が起こりやすくなる

動物モデルで確認されたような損傷誘導性の変化がヒトの脳でも起こると考えられている

脳卒中後の回復メカニズムや機能回復と脳の再組織化、二次運動野の代償的役割を理解することでより効果的な治療戦略を立てられる一助になるかと思います。

(非麻痺側の体性感覚入力の減少、麻痺側の体性感覚入力の増加、非損傷側運動野の活動抑制など)

Mechanisms Underlying Recovery of Motor Function After Stroke

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15596603

                       NEUROスタジオ東京  山岸