脳卒中後の片麻痺患者さんの治療において、肩関節亜脱臼は私たちセラピストが直面する大きな課題の一つです。
実に患者さんの17%から81%という高い割合で発生するこの症状は、適切な介入なしでは不可逆的な状態に陥る可能性があり、早期からの効果的な治療介入が求められます。
今回は、
をもとにまとめてみました。
最後まで見ていただくと励みになります。
研究概要
この課題に対し、24名の急性期脳卒中患者さんを対象とした前向き無作為化対照試験(RCT)を実施
対象となった患者さんは、急性期の脳卒中患者で肩関節亜脱臼が確認された方々です。これらの患者さんを無作為に2群に分け、
- 従来の棘上筋と三角筋後部繊維への電気刺激を行うグループI(従来群)と、
- それらに加えて上腕二頭筋長頭への電気刺激を追加したグループII(新規介入群)として治療効果を比較検討しました。
研究結果
特に注目すべきは、従来の方法と比較して、上腕二頭筋長頭への電気刺激を追加したグループでは54.74%という顕著な改善が見られたことです。これは、従来の方法による22.4%の改善率を大きく上回る結果となっています。
効果のメカニズム
この効果の背景には、以下のようなメカニズムが考えられます:
- 筋力増強による関節の力学的安定性の向上
- 血流改善による酸素供給の促進
- 内因性オピオイドの産生促進による疼痛緩和
- 肩関節の動的安定性の向上
臨床での注意点
実臨床では、弛緩期における体幹の麻痺側への傾きによって引き起こされる肩甲骨の下方移動に注目する必要があります。この時期に適切な電気刺激療法を実施することで、不可逆的な変化を予防できる可能性が高まります。
また、痛みの軽減効果も見逃せません。疼痛は患者さんのリハビリテーションへの意欲を低下させる大きな要因となりますが、適切な電気刺激療法によって、この問題にも対処できることが示唆されています。
実施時の留意点
この治療法を実施する際は、以下の点に注意が必要です:
・患者さんの状態に応じた適切な刺激強度の設定
・電極の正確な貼付位置の確認
・定期的な効果の評価と記録
今後の展望
今後は、さらなる研究によって、筋電図分析などを用いた詳細なメカニズムの解明や、より効果的な刺激パラメータの特定が期待されます。
私たちセラピストは、このような新しいエビデンスに基づいた治療アプローチを積極的に取り入れることで、脳卒中後の患者さんのQOL向上により一層貢献できるのではないでしょうか。
参考文献
J Bala Manigandan; Effect of electrical stimulation to long head of biceps in reducing gleno humeral subluxation after stroke, NeuroRehabilitation, 2014;34(2):245-52.
NEUROスタジオ 大阪 施設長