TIS(Trunk Impairment Scale)とは
Verheydenらヴァンへーテンさん(ベルギー)らが2004年に発表した脳卒中片麻痺患者のための座位バランスに着目した体幹機能評価法
Trunk Impairment Scale(TIS)は、脳卒中後の体幹の運動障害を評価するために開発されたスケールです。TISは、0から23までの範囲で静的および動的座位バランス、体幹の協調性、および体幹の運動の質を評価します。これにより、治療プログラムの立案、リハビリテーション施設での患者の介入の効果を評価することができます。
TISは、体幹機能を評価するための尺度です。体幹機能は、バランスや姿勢制御の重要な要素であり、日常生活や機能に必要不可欠な前提条件となります。
脳卒中患者においては、体幹機能の障害が一般的であり、バランスの制約、姿勢制御の障害、転倒リスクの増加、運動障害や日常生活動作への介助が引き起こされることがあります。
そのため、TISを測定することは脳卒中患者のリハビリテーションにおいて重要な役割を果たします。
2004年から世界的に体幹機能の評価として使用されてきており、国際学会での体幹機能のアウトカムとしては外せない評価バッテリーである。
✔︎概要
TISは。
・静的座位バランス (3項目)
・動的座位バランス (10項目)
・体幹協調性 (4項目)
の17項目から構成
・静的座位バランス (7点)
・動的座位バランス (10点)
・体幹協調性 (6点)
の合計23点満点で採点
○FACTと違い採点時に代償動作も影響するので細かく体幹機能を評価するのに適している
✔︎検査測定時のルール
① 背もたれや肘掛けのないベッドや治療台に座る
②大腿はベッドや治療台に完全につけ、足部は肩幅で床に完全設置
③膝関節90度屈曲位、上肢は足の上に乗せる。過緊張があるならば、麻痺側上肢はその位置が開始肢位となる。頭部と体幹は中間位。
④最初の項目で0点となれば、全得点0点となる
⑤テストは各3回、最も高い得点を採用。事前練習は行わない
✔︎評価測定
TIS 静的座位バランス 項目①
・評価: 端座位保持
※もし点数が0点ならばTISの合計点は0点となる
・採点:
0点 患者が転倒する、または上肢の支持なしで10秒間は開始姿位を保持できない
2点 患者は10秒間開始姿位を保持できる
TIS 静的座位バランス 項目②
・評価: 検者が非麻痺側下肢を麻痺側下肢の上に組む
・採点:
0点 患者が転倒する
2点 患者が10秒間座位を保持できる
TIS 項目③ 静的座位バランス
・評価: 患者が非麻痺側下肢を麻痺側下肢の上に組む
・採点:
0点 患者が転倒する
1点 患者はベッドや治療台上の上肢の支持なしでは下肢を組めない
2点 患者は下肢を組むが、体幹を10cm以上後傾する、もしくは手で下肢を補助する
3点 患者は体幹の変移や上肢の補助なく下肢を組む
TIS 動的座位バランス 項目①
・評価: 患者は麻痺側の肘でベッドや治療台に一度触れ開始姿位へ戻るように指示する
・採点:
0点 患者が転ぶ、いずれかの上肢の補助を必要とする、もしくは肘がベッドや治療台に触れない
1点 患者は能動的に補助なしで動き、肘がベッドや治療台に触れる
※もし点数が0点ならば項目②、③は0点となる
TIS 動的座位バランス 項目②
・評価: 項目①を繰り返す
・採点:
0点 患者は短縮/伸張が行えない、もしくは反対側の体幹を短縮/伸長させる
1点 患者は適切に体幹を短縮/伸長させられる
※もし点数が0点ならば項目③は0点となる
TIS 動的座位バランス 項目③
・評価: 項目①を繰り返す
・採点:
0点 患者は代償する
⑴上肢の使用
⑵反対側の股関節外転
⑶股関節屈曲
⑷膝関節屈曲
⑸足部の移動
1点 患者は代償なしに動く
TIS 動的座位バランス 項目④
・評価: 患者は非麻痺側の肘でベッドや治療台に一度触れ開始姿位へ戻るように指示する
・採点:
0点 患者が転ぶ、いずれかの上肢の補助を必要とする、もしくは肘がベッドや治療台に触れない
1点 患者は能動的に補助なしで動き、肘がベッドや治療台に触れる
※もし点数が0点ならば項目⑤、⑥は0点となる
TIS 動的座位バランス 項目⑤
・評価: 項目④を繰り返す
・採点:
0点 患者は短縮/伸張が行えない、もしくは反対側の体幹を短縮/伸長させる
1点 患者は適切に体幹を短縮/伸長させられる
※もし点数が0点ならば項目⑥は0点となる
TIS 動的座位バランス 項目⑥
・評価: 項目④を繰り返す
・採点:
0点 患者は代償する
⑴上肢の使用
⑵反対側の股関節外転
⑶股関節屈曲
⑷膝関節屈曲
⑸足部の移動
1点 患者は代償なしに動く
TIS 動的座位バランス 項目⑦
・評価 :患者は麻痺側骨盤をベッドや治療代から持ち上げ、開始姿位へ戻るように指示する(麻痺側骨盤側方挙上)
・採点:
0点 患者は短縮/伸張が行えない、もしくは反対側の体幹を短縮/伸張させる
1点 患者は適切に体幹を短縮/伸張させられる
※もし点数が0点ならば項目⑧は0点となる
TIS 動的座位バランス 項目⑧
・評価: 項目⑦を繰り返す
・採点:
0点 患者は代償する
⑴上肢の使用
⑵同側の足部で床を押す(踵が床から離れる)
1点 患者は代償なしに動く
TIS 動的座位バランス 項目⑨
・評価 :患者は非麻痺側骨盤をベッドや治療台から持ち上げ、開始姿位へ戻るように指示する(非麻痺側骨盤側方挙上)
・採点:
0点 患者は短縮/伸張が行えない、もしくは反対側の体幹を短縮/伸張させる
1点 患者は適切に体幹を短縮/伸張させられる
※もし点数が0点ならば項目⑩は0点となる
TIS 動的座位バランス 項目⑩
・評価 :項目⑨を繰り返す
・採点:
0点 患者は代償する
⑴上肢の使用
⑵同側の足部で床を押す(踵が床から離れる)
1点 患者は代償なしに動く
TIS 協調運動 項目①
・評価 :患者は開始姿位で頭部を固定したまま、初めに麻痺側を動かし上部体幹を6回(各肩を3回ずつ突き出すように)回旋させる
・採点:
0点 麻痺側が3回動かない
1点 回旋は非対称である
2点 回旋は対称的である
※もし点数が0点のならば項目②は0点となる
TIS 協調運動 項目②
・評価: 6秒以内に項目①を行う
・採点:
0点 回旋は非対称である
2点 回旋は対称的である
TIS 協調運動 項目③
・評価 :患者は上部体幹を開始姿位で固定したまま、初めに麻痺側を動かし下部体幹を6回(各膝を3回ずつ前方に突き出すように)回旋させる
・採点:
0点 麻痺側が3回動かない
1点 回旋は非対称である
2点 回旋は対称的である
※もし点数が0点のならば項目④は0点となる
TIS 協調運動 項目④
・評価: 6秒以内に項目①を行う
・採点:
0点 回旋は非対称である
2点 回旋は対象である
MCIDについて
急性期脳卒中患者は3.5点(セラピスト,患者 )
生活期脳卒中患者は1.5点(セラピスト)2.5点(患者)
Marco M,2017より引用
TISの最小臨床有意差(MCID)は、急性期および慢性期患者について異なります。患者の視点から見た場合、急性期および慢性期患者の最適なカットオフ値は、それぞれ3.5点と2.5点でした。一方、セラピストの視点から見た場合、慢性期患者に対する値は1.5点でした。これは、セラピストに比べて患者が改善をしていると認識していることを示しています