はじめに
脳卒中者において、経験的に体幹機能の重要性が指摘され歩行との関係などが報告されています
既存の臨床的な体幹機能検査にはSIASの体幹項目、TCT(Trunk Control Tests)などがありますが
そのうちSIASは片麻痺を要素的に捉えることができる面では優れているが、体幹項目だけで見るとみると静止座位保持脳力と体幹筋力体感筋力しか見ることができず、
TCTは機能障害と能力障害が混在していると指摘されているようで、
実際の理学療法において具体的な介入の選択に結びつけられるものが少ないとされている
奥田 裕 他, : 臨床的体幹機能検査(FACT)の開発と信頼性, 理学療法化学 21 (4) , 357-362, 2006
一方でFACTは、静的座位保持能力から動的座位保持能力など10項目の測定があり、臨床的な視点から治療介入へ結びつけやすい評価指標となっている
また、日本人が開発者ということもあり、日本国内での学会報告や論文で多く引用されているので、国内での吟味には通じるものが多い
FACTの基本概念
- 治療上で用いることができ、そのパフォーマンスが理学療法の評価治療場面から選定されている治療指向的な評価指標であること
- 結果を点数化することで対象者の変化を捉えやすい
- 特別な機器を使用せず5分以内で測定可能で体位変換もなく、負担が少ない
検査方法
採点
各検査1~10項目行い、20点満点で採点
測定姿勢
可能な限り両下肢を床に足底接地した端座位姿勢
測定場所
40~45cmの高さで一定の硬さの座面を保った治療台やベッドなどの場所
(掲示的な変化を追っていくためにも、測定場所を統一をすことが望ましい)
検査手順
・1~10項目の検査を順に検査する
・FACTは最大能力を評価するため、3回施行した際の最大パフォーマンスを代表値にする
項目1 静的端座位保持能力~上肢支持あり~
・方法 上肢で手すりや座面を保持すれば10秒端座位保持できる
・採点 0点 不可
1点 可能
項目2 動的端座位保持能力~上肢支持なし~
・方法 上肢で支持せずに10秒短座位保持できる
・採点 0点 不可
1点 可能
項目3 下方リーチに伴う動的座位保持能力
・方法 左右どちらか片側の手で反対側の足首を握り戻ることができる
※股関節内外転/内外旋しない、踵が床から離れない
※肘や手で大腿部を支えに使わない、戻る時も支えない
・採点 0点 不可
1点 可能
項目4 臀部移動に伴う動的座位保持能力
・方法 両側臀部を持ち上げながら、左右に10センチ以上移動することができる
・採点 0点 不可
2点 可能
項目5 側方への重心移動を伴う動的座位保持能力
・方法 片側の臀部を挙上し3秒以上座面から離すことができる
※視覚的に離れているか確認が困難な場合は、検者の手を坐骨と座面の間に入れ、3秒ベッドから離せているかを確認すると良い
・採点 0点 不可
1点 片側可能
2点 両側可能
項目6 下肢挙上時に伴う動的座位バランス
・方法 片側ずつ下肢挙上を行い3秒保つ
※踵やつま先をベッドに接触させない
※視覚的に足部が離せているか困難な場合は、大腿後面の遠位部や足底が浮いているかを手で確認し3秒保てているか判断
・採点 0点 不可
1点 片側可能
2点 両側可能
項目7 両下肢挙上に伴う動的座位保持能力
・方法 両側下肢を挙上させ3秒r保つ
※踵やつま先をベッドに接触させない
※視覚的に足部が離せているか困難な場合は、大腿後面の遠位部や足底が浮いているかを手で確認し3秒保てているか判断
・採点 0点 不可
2点 可能
項目8 骨盤の前後移動に伴う動的座位バランス(お尻歩き)
・方法 片側ずつ臀部を持ち上げ、前後どちらにもお尻歩きができる
※持ち上がった側の骨盤が移動するかを確認
※支持側の坐骨は移動しないことを確認
・採点 0点 不可
3点 可能
項目9 体感回旋に伴う動的座位保持能力
・方法 検者は仙骨部後方20cmの座面に指を接触させる。それを肩越しに見て、1秒間隔で3回変わる検者の指の本数を答えることができる(手の形を真似できる)
※検者は1秒間隔で指の形を変え、その都度指の本数を数えてもらい、体幹回旋位を保持できるかみる
・採点 0点 不可
3点 可能
項目10 上肢挙上に伴う動的座位保持能力
・方法 左右どちらか片側上肢を最大努力で挙上(肩関節屈曲)し、肩関節内外旋/内外転中間位で、上腕骨を床面に対し垂直位まで上げることができる
※もう少しで上がりそうでも、完全に垂直いでなければ不可と判定
※肩関節自体に障害を有している場合は、体幹完全伸展位で骨盤前傾、両肩甲骨内転の反応が出現するかで判定
・採点 0点 不可
3点 可能
MCID (臨床的意義のある最小変化量)
FACTのMCIDは4点
急性期脳卒中者における治療効果を判定する評価指標としてFACT ,TCT ,SIAS-tの反応性及びMCIDを検討
その結果、FACTがTCTやSIAS-tに比べ体幹機能の変化が捉えやすい、予測能が高い、天井効果がが得られにくいことから、体幹機能への介入効果を判定することに優れている体幹機能評価指数であることが示唆
また、FACTのMCIDは4点であったため、急性期脳卒中者では約3週間の理学療法介入にてFACTの点数4点以上であった場合、体幹機能が改善したことを示すことが示唆された