研究の目的
本研究は、大腿四頭筋(特に内側広筋、外側広筋、大腿直筋)上のモーターポイント(MP)の分布をマッピングし、MPが見つかる確率を示すヒートマップを作成することを目的としています
NMES(神経筋電気刺激)の最適な電極配置をサポートするためのガイドとして活用されます
方法
31人の健康な成人を対象に、超音波で大腿四頭筋(内側広筋、大腿直筋、外側広筋)の個別解剖を特定後、3Hzの神経筋電気刺激装置とMP-ペンを使用してモーターポイント(MP)探索を実施
膝15度屈曲位(21人では膝90度屈曲位でも測定)での探索中、発見したMP位置を記録
大腿解剖を標準化し、112個(8×14)の3×3cm区画に分け、各区画でのMP発見確率を計算してヒートマップを作成
MP数と参加者特性(活動レベル、体脂肪など)の関連も分析

主な発見
1.モーターポイントの分布には個人差が大きい
・被験者間でMPの位置と数に大きなばらつきが見られた
2.高確率エリアが特定された
・外側広筋(VL)と内側広筋(VM)のそれぞれに、MPが見つかる確率が50%以上の3×3cmの領域が1か所ずつ存在した
・大腿直筋(RF)は最大でも29%の確率にとどまった

(All motor points heat-map: すべてのモーターポイントの分布、 Best motor points heat-map: 最も効率的な刺激が得られるモーターポイント)
3.身体的特徴との相関
・身体活動レベルが高い人や体脂肪率が低い人は、より多くのMPが検出された(R² = 0.42, p < 0.0001)
4.膝関節角度の影響は限定的
・膝関節を15度と90度にした比較では、約80%のMPは0.5cm以内の移動しか見られなかった
結論
・MPの位置と数は個人差が大きいため、理想的には個別に検索すべきだが、今回作成されたヒートマップは検索を効率化するガイドとして有用
・特に、初心者や医療スタッフが簡易的にNMESを適用する際に役立つ
・また、運動習慣や体脂肪率がNMES効果やMPの探索性に影響を与える可能性が示された
🏥 リハビリにおける臨床的意義
① 電気刺激療法(NMES)の効率と効果の向上
モーターポイント(MP)に正確に電極を配置すると、低い刺激強度で効果的な筋収縮を誘発でき、
・患者の不快感が少ない
・治療効果(筋力維持・改善)が高い
② 廃用性筋萎縮の予防・改善
・寝たきりや手術後などの運動制限中の筋萎縮予防にNMES使用時に高確率でMPが存在するエリアを知ることで、確実に筋肉へ刺激が届きやすくなり、より効果的に萎縮を防げる
③ 個別化リハビリのサポート
患者の体型や運動習慣に合わせて、NMESのアプローチを調整する根拠となる
④ 在宅医療・セルフケア支援
高確率エリアに電極を貼ることで、患者自身や介護者でも簡単にNMESを実施できる可能性が広がり、自己管理による自主リハビリに貢献できる
参考文献
J. Flodin et al. Motor point heatmap guide for neuromuscular electrical stimulation of thequadriceps muscle. 2023
NEUROスタジオ東京